学会会長挨拶

会長就任にあたって

澤田 浩一(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産技術研究所)

海洋音響学会会長
澤田 浩一(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産技術研究所)

 このたび2025-26期の海洋音響学会会長に選任され,大変光栄に存じますとともに,海洋音響学会の運営の責任の重さを緊々と感じているところです.今後は,新たに副会長に選任されました赤松友成氏,土屋健伸氏並びに,理事の皆様,事務局とも力を合わせ,会員の皆様のご意見を伺いながら海洋音響分野と本学会発展のために努力していきたいと考えています.

 定款にありますように,海洋音響学会は「広く海洋音響に関心をもつ人々に対して,海洋音響に関連する学術調査研究,普及啓蒙及び研究開発の奨励等に関する事業を行い,海洋音響学,海洋音響技術の普及を図り,わが国の科学技術の進歩発展の促進に寄与する」ことを目的として活動を行っています.1973年7月10日の設立当初は,海洋音響研究会として活動を開始し,1989年5月の総会を経て海洋音響学会となりました.私が大学院を修了し,当時の水産庁水産工学研究所に配属されたのが1988年4月であり,当時の古澤昌彦音響機器研究室長に誘われて入会したのが1990年頃だと思いますので,入会した時には既に学会だったことになります.その当時,ベーリング海公海域で日米共同調査が始まっており,私も音響担当の一人ということで,毎年,チャーターした漁船に日本で開発した計量魚探機を搭載し,ベーリング海の調査に行っていました.調査ではスケトウダラの現存量推定だけでなく,現存量推定精度にもかかわるターゲットストレングスデータも収集し,その結果を海洋音響学会の研究発表会で発表し,その後,はじめて海洋音響学会誌に投稿させてもらいました(Sawada, Furusawa, and Williamson, 1993 海洋音響学会誌通巻70号).

 学会では啓蒙普及の一環として,初学者向けの専門書の出版を行っており,1984 年に「海洋音響-基礎と応用」を出版しました.その後全面的に書き替え,2004年に,書籍「海洋音響の基礎と応用」を出版し現在も重版されています.本書籍は,毎年行われる技術講習会のテキストとしても使われていますが,出版後20 年以上が経過し,特に応用部分の改訂が望まれているところです.そこで,2025 年度から改訂委員会を立ち上げ,年度内に改訂方針を定め,55 周年となる2028 年の出版を目指し,取り組んでいく予定です.

 学会は,研究発表会などを通じて,様々な年代の方と知見やアイデアを共有するとともに異なる視点からの意見をいただくことによりそれぞれの研究を高めていくことができる場であると考えています.ここに来れば何かいいことがあると思えるような学会となるように努力していく所存です.皆様のご支援を心からお願い申し上げます.

(2025年6月25日)