全周ソナーの標準データフォーマット研究部会報告書

概要

計量魚群探知機を用いた音響調査はノルウェー、フランス、スペイン、米国、ペルーなど世界的に行われており、水産有用魚種の現存量評価に使用されている。また、マルチビームソナーも測深だけでなく、生物調査にも利用されている。漁業においては、表層を含む広範囲の探索のため全周ソナーが有効的に使用されている。もしも全周ソナーを利用した調査ができれば、より広範囲に、より表層付近までの調査が可能となる。そこで、海洋音響学会の研究部会「ソナーを利用した海洋生物の資源調査方法研究部会」を立ち上げ、2009年7月〜2011年12月にかけて、7回の部会を開催し、漁業用ソナーの原理と特徴、水産資源調査におけるソナーの利用例、ソナーによる計量の原理と方式、定量化に必須となる魚のターゲットストレングス特性、最新の調査例、今後の展望などについて部会報告書としてとりまとめ、その内容を2012年9月に開催されたシンポジウムで発表した。それから約4年後の2016年の4月に開催されたICES Working Group on Fisheries Acoustics, Science and Technology (WGFAST) において、ノルウェーのInstitute of Marine Researchの研究者であるHector Pena氏ならびにGavin J. Macaulay氏を主体とするグループが、全周ソナーのデータフォーマットの標準化に関するTopic Groupを立ち上げ、関心のある研究者間でメールをやりとりし、WGFASTでの標準フォーマットの提案を目指すことになった。
日本は漁業用ソナーの開発・生産では世界有数であり、計量ソナーに関する先進的な研究も行われている。このような海外での動きに対して、標準フォーマットを受け入れるだけでなく、日本からも発信できるように準備しておく必要がある。そこで、メーカー、大学、研究所の協力のもと、定量化に必要なパラメータを定め、ソナー方程式に基づく合理的な全周ソナーのデータフォーマットについて、検討、提案していくとともに、計量ソナーの実現に向けた幅広い議論を行うことを目的とし、調査・研究を行った。

目次

第1章 概要

1.1 部会の目的
1.2 部会の構成および経過
1.3 成果の概要

第2章 ソナーの原理と特徴

2.1 ソナー方程式
2.2 各種ソナーと全周・半周ソナー
2.3 マルチビームソナー

第3章 ソナーデータの定量的利用

3.1 定量化手法の概要
3.2 エコー積分方式
3.3 マルチビームエコー積分方式
3.4 課題と展望

第4章 ソナーデータのフォーマット

4.1 トピックグループ(TG)概要
4.2 SONAR-netCDF4フォーマット
4.3 ソナー方程式の比較

第5章 今後の展望
付録1 ファイルフォーマットnetCDF4
付録2 トピックグループ内での質疑応答