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第34回海洋工学パネル (2006/7)

第34回海洋工学パネルプログラム (PDF)

テーマ: 海洋環境問題を科学と工学の接点で考える

開催日時: 2006年7月27日(木) 9:30~17:30

会場: 東京大学 生産技術研究所 総合研究実験棟 大会議室(301号室)

(今回の会場は従来の日本大学理工学部駿河台校舎とは異なりますので、ご来場に際してはご注意下さい)

【コンセプト】

地球温暖化に代表されるように、海洋環境に関してはサイエンスの立場からも興味あると同時に深刻なさまざまな観測結果が報告されている。しかし、これらがどのように具体的な形で工学に繋がりを持つのかについての議論はあまり行われていない。これは,科学者と工学者が興味を抱く空間や時間のスケールの差異に起因している場合が多い。しかし、近年の地球環境異変は局所事象のメカニズムがそのまま同時に巨大事象へ移行する場合も多く、またこれらの進行速度は予想以上に速い。そのため、工学者の立場からも考えねばならない空間・時間範囲に入ってきている事象も多く想定され、早急に工学的検討を始めないと手遅れになりかねない。このパネルでは、海洋サイエンスで将来が懸念されているさまざまな海洋環境問題について、その影響の理解を深めるとともに工学の立場からの対応を議論する。

【プログラム】

午前の部 司会 日本海洋工学会運営委員 川西利昌(日本水産工学会)

9:30~9:35 開会挨拶 日本海洋工学会会長 山崎哲生(資源・素材学会)

(1) 9:35~10:20

「地球温暖化に伴う海面上昇の影響と対応」

三村信男(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター 教授)

最近、世界規模で気温の上昇が観測され、各地で台風やハリケーンによる高潮、洪水、

干ばつ、熱波の来襲など、様々な異常気象による災害が起こっている。そのため、北極海の氷やヒマラヤの氷河の融解、生態系の変化などの形で既に温暖化の影響が検知されているが、それに続いて異常気象にも温暖化の影響が現れ始めたのではないかという懸念が広がっている。地球温暖化問題の科学評価機関である「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、2001年に発表した第3次報告書で、複数の将来社会シナリオとCO2などの温室効果ガスの排出シナリオを作成し、その情報を入力条件にした気候モデルの予測結果をまとめた。また、台風の変化に関する最新の研究では、全球の熱帯低気圧の発生数が減少する一方、勢力の強い台風の発生が増えるという傾向が報告されている。これらの環境変化が生じると、低地帯の水没、高潮の危険性の増大、海岸侵食の激化、塩水の河川や地下帯水層への侵入など様々な影響が広がると予測されている。 一方、気候変動への対策では、2005年2月に京都議定書が発効し、国連気候変動枠組み 条約(UNFCCC)の下での国際的な温暖化対策が正式にスタートした。これによって、先進 工業国と旧東欧圏の経済移行国は温室効果ガス(GHG)排出の削減義務を負い、2008年~ 2012年の第一約束期間における削減目標達成を目指している。同時に、2003年のヨーロッパの熱波や2005年8月の米国ニューオリンズにおけるハリケーン・カトリーナの被害によって、国際的に、異常気象の頻発などへの懸念が広がるとともに、将来の温暖化影響にどう備えるかという長期的な課題も浮上している。これらへの対応措置が適応策である。

とりわけ、GHG排出量が少なく、その一方で気候変動・異常気象の影響を受けやすい熱帯・亜熱帯の途上国や小島嶼国では、適応策への関心が急速に高まっている。こうした状況を踏まえて、本講演では、アジア・太平洋における影響予測の現状を紹介するとともに、適応策と呼ばれる影響低減策についても報告する。

(2) 10:20~11:05

「地球シミュレータを用いた大気海洋結合系の予測」

榎本 剛(独立行政法人海洋研究開発機構 地球シミュレータセンター 研究員)

擾乱により局所的に強化された大気と海洋との相互作用は、天候レジームの変化にも影響を与えていることが最近の研究から明らかになってきた。このような場所は、大気海洋相互作用の「窓」と呼ぶことができる。これまでの低解像度の大気海洋結合モデルでは、「窓」を通じた密な結合が十分表現されていなかった。我々が開発した地球シミュレータ 上の大気海洋結合モデルCFESは、大気の低気圧や前線、海洋の黒潮のような強い海流に伴う渦を詳細に表現できる。このような高解像度での大気海洋結合シミュレーションは、大気海洋結合系の予測に質的な変化をもたらすものと期待される。

(3) 11:05~11:50

「増え続ける二酸化炭素が海洋生態系に与えるさまざまな影響」

白山義久(京都大学 フィールド科学教育研究センター 瀬戸臨海実験所 教授)

大気中の二酸化炭素が増え続けていることは周知の事実だ。そして温暖化ガスとしてのこの物質の環境影響が強く懸念されている。しかし、二酸化炭素が水に溶けてイオン化し、酸を作ることは温暖化ほど心配されていない。しかし、将来予想される濃度の二酸化炭素を含む空気で海洋生物を飼育してみると、ウニ・マキガイなど特に炭酸カルシウムの骨格をもつ海洋生物にさまざまな影響がでることが明らかになってきた。温暖化と違って必ず将来起こる海水酸性化の問題は、二酸化炭素の排出を抑制せねばならない重要な理由のひとつとして認識されるべきものである。

11:50~12:30

討論―1

12:30~13:30 昼食

午後の部―1 司会 日本海洋工学会運営委員 池上国広(日本船舶海洋工学会)

13:30~14:00

海洋工学関連会議報告

(4) 14:00~14:45

「プランクトンに対する紫外線影響の評価:工学的対応に対する提言」

田口 哲(創価大学 工学部 環境共生工学科 教授)

南極上空におけるオゾンホールの発見以来、紫外線の生物に及ぼす影響は、地球環境問題として急速に研究されてきた。その結果、紫外線の影響は、バクテリアから魚類まで認められた。また海洋生物は、紫外線曝露から自ら防御する紫外線吸収物質を体内に蓄積することも明らかとなった。また、短期間と長期間の曝露実験とでは得られる実験結果が異なることも明らかとなった。しかし、紫外線の影響において、曝露時間とその強度との間には可逆性の法則は未だに確認されていない。このことは、海洋の表層で海水が常に混合している層における紫外線の影響を評価する上で、最大の問題点となっている。現在の研

究が、どこまで進んで来ているのか、将来への展望を含めて、議論する。

14:45~15:15 コーヒーブレイク

午後の部―2 司会 日本海洋工学会運営委員 多部田 茂(日本沿岸域学会)

(5) 15:15~16:00

「魚介類に及ぼす環境ホルモンや有害物質等の影響」

堀口敏宏(独立行政法人国立環境研究所 環境リスク研究センター 主席研究員)

船底塗料や漁網防汚剤などとして世界的に使用されてきた有機スズ化合物(トリブチルスズ(TBT)及びトリフェニルスズ(TPT))は、環境ホルモンの一種として知られている。ここでは、イボニシ及びバイを中心とした巻貝類のインポセックスと、原始的な巻貝の仲間であるアワビ類の雌の雄化現象を主たる対象に、フィールド調査と室内実験の結果から明らかとなったその実態及び有機スズ化合物との因果関係について紹介したい。また、2004年に演者らが発表した、有機スズによる巻貝類のインポセックス誘導機構に関する新たな仮説(RXR仮説)も紹介したい。さらに、2002年から国立環境研究所が東京湾で実施している包括的な調査結果の一端も紹介し、今後の調査研究の方向性を論議したい。

(6) 16:00~16:45

「水産資源の変動とそのマネジメント」

桜本和美(東京海洋大学 海洋科学部 教授)

一般に、水産生物の資源量変動は極めて大きいことが知られている。レジームシフトなどが認識されるようになり、これらの大変動が海洋環境に強く影響されていることが明らかになってきた。講演では上記についていくつかの例を紹介し、海洋環境の少しの変化が大きな資源変動を引き起こすことを示す。

大きく変動する水産生物資源のマネジメントを計画・実施するためには、これらの変動メカニズムを把握することが重要で、海洋学の知識と地球規模で海洋環境変動をモニタリングし予測するための工学的な手法の融合が不可欠である。

16:45~17:25

討論―2

17:25~17:30 閉会挨拶 日本海洋工学会副会長 遠藤茂勝(土木学会)

17:45~19:15 懇親会

司会 日本海洋工学会運営委員 定木 淳(資源・素材学会)